2019.09.30
店内の奥に、6冊の本が並んでいます。2か月に一度、テーマを変えて入れ替えをしており、その時期ごとの東北の魅力を発見できる本がセレクトされている“このカフェだけの小さな図書館”です。選書してくださっているのは、有限会社BACH(バッハ)の幅 允孝(はば よしたか)さん。全国各地のあらゆる施設で、その場所と人と本をつないでいます。今回は幅さんに「Route 227s’ cafe 6冊図書館」について、いろいろなお話を伺ってみました。
◆「Route 227s’ cafe 6冊図書館」と命名した意図は?
スペースがなくて6冊しか置けなかったという理由もありますが(笑)。今はインターネットで文章や物語に出会うことも多く、リアルな本がたくさんあることがポジティブなことではないというふうにだんだん変わってきたと思うのですが、1冊1冊をしっかり届け、読んでもらう場所を作ろうという意味で「6冊図書館」という名前にしました。それぞれがバラバラではなくて、ワンテーマで集められた本たちですし。
◆選書において、どのようなことを意識していますか?
テーマは決まっていますが、多様なジャンルを揃えるようにしています。また、公園という人の出入りが激しい場所にあるカフェですし、1冊読み切るというよりは、ビジュアルが多くて好きなところから読み始められるようなものにしようと。ゆっくり読んでもらっても、パッと開いてもその本の特長がわかるような、そういう本を選んでいるつもりです。
◆幅さんにとって、東北はどのような印象ですか?
東北は、仕事でもプライベートでもよく行っていますよ。東北の何が好きかなぁ…。やっぱり食べものがおいしい。食べるのも飲むのも好きな僕にはたまりませんね。
弘前市に笹森さんという素晴らしいシェフの方がいらっしゃって、とてもおいしいイタリアンを食べられるので、そのお店目当てでわざわざ行くこともあります。
ほかにも、東北は作家とつながりが多く、書き手の根っこを感じることができる魅力的な場所がたくさんあります。本を選ぶ際も、自分が訪れた東北のさまざまな情景や作家のことを思い浮かべながら選んでいます。
◆幅さんにとって、本はどのようなアイテムですか?また、旅とはどのようなものですか?
本は、「人」だと思いますね。1人の書き手の言葉を1人の読者が受け取るという「精神の受け渡し」。それが読書なのかなと思っています。今の世の中はシェアが主流で、あらゆることを共有しようとしますが、本は基本的に1人でしか読めない。孤独にならざるを得ないというところが、本を読むという行為のいいところかなと私は思いますね。
「旅」は、思いもよらない体験をするというところが好きですね。旅の醍醐味って「肩すかし」だと思っていて。お目当てだった美術館が休館日だったとか、ここにしかない絵を見に行ったのに、その時に限って日本を巡回中だったとか。行ってみないとわからないこともあり思うようにいかないけれども、それを受け入れながら味わうことが「旅」の魅力だと思います。
◆「Route 227s’ cafe 6冊図書館」をどのように楽しんでほしいですか?
最近は本を手に取るのが面倒という方もいるかもしれないですが、コーヒーを飲んでまったりしながら、気が向いたときに・気が向いた本を開いてみていただけたらありがたいなと。あまり肩ひじ張らずに。なんか面白そうだなと思ったら少し読み込んで、関係のある東北のその場所へ足を運ぶきっかけになっていただけたら嬉しいですね。
幅允孝(はば・よしたか)
有限会社BACH(バッハ)代表。ブックディレクター
人と本の距離を縮めるため、公共図書館や病院、動物園、学校、ホテル、オフィスなど様々な場所でライブラリーの制作をしている。最近の仕事として札幌市図書・情報館の立ち上げや、ロンドン、サンパウロ、ロサンゼルスのJAPAN HOUSEなど。近年は本をリソースにした企画・編集の仕事も多く手掛け、JFLのサッカーチーム「奈良クラブ」のクリエイティブディレクターを務めている。早稲田大学文化構想学部、愛知県立芸術大学デザイン学部非常勤講師。Instagram: @yoshitaka_haba